第99話 初陣。

 轟音が鳴り響く。エンジとハルヒが出現場所の方向をそれぞれ指し示す。俺はジュウザブロウさんに続いて走った。

 目標は”既視型自動車”のDemiseデミス。自動車のボディに、本来タイヤがある場所には腕が生えていた。四足歩行の自動車が猛スピードで迫ってくる。

 足が震える。 そんな俺の肩をジュウザブロウさんが叩いた。


【大丈夫だ、ヒカル。何があってもオレが守る。逃げたって構わない。さぁ、行くぞ】


 シャルを握りしめ構える。ジュウザブロウさんの背中越しにDemiseが見えた。


【ヒカルは合図するまで待機だ。ジンはオレのサポートを頼む】

『はい!』【わかりました】


 2人が返事をすると、ジュウザブロウさんが動き出した。


【……行くぞ!】


 地面がえぐれるほどの踏み込みで、ジュウザブロウさんは飛び出した。ジンも続いて走る。俺はその姿を見ながら、いつでも動けるように気を張っていた。


 足の震えは、気付けばもうなくなっていた。


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