第295話 遺言。

 8月  日……


【どうなってんだよ、おい!】

【俺に聞かれたってわからへんよ】


 全員が不安そうに騒ぐ。


『……みんな聞いてくれ』

【ヒカルさん?】


 俺はデゼスプワールが言っていた言葉をみんなに伝えた。


【”私を倒しても、時は戻らない”……だと……】

【じゃあ、ずっとこのままってことなんでしょうか……?】

【わからないわ……】

『何か方法があるはずだ』

【そうは言ってもな……】

こう不幸ふこうか、デゼスプワールはもうおらへんからな】

【そりゃ”幸”だろ】


 頭を悩ませ続けた。


【うっ……】


 突然アスカが胸を押さえてしゃがみこんだ。


『アスカ! どうした!?』

【アスカさん!】


 アスカは苦しそうな顔をしている。


【だ、大丈夫よ……】

【大丈夫って顔ちゃうやろ!】

【こんなときに……ごめんなさい……くっ……】

【別に謝ることじゃないですよ!】


 どうしたんだ、いったい。


【くっ……あっ!】


 アスカの体が一瞬光った。


【な、なんだ……?】

【アスカさん……!?】


 全員の心配を他所よそに、アスカはさっきと打って変わってスッと立ち上がった。


『アスカ、大丈夫なのかよ……?』


 アスカは俺たちに背を向けながら少し歩くと、こちらを振り返った。


【みなさん、デゼスプワールの破壊。お疲れ様です。そして、ありがとうございました】


 深々とお辞儀をしている。全員が状況を理解していない。そんな俺たちを無視して、アスカは続けて言った。


【私は”時の女神”……クロノ=ティアです】

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