第104話 意外。

 8月151日……


 戦いから一夜が明けた。昨日は気合を入れて動いていたせいもあって、体中のあちこちが痛い。が、訓練のおかげもあり、最初の頃のように動けなくなるほどではない。顔を洗い、レイヤー2へと向かった。


 昨日戦った場所へ行き、あの時の感覚を思い出す。


『ここで……俺は……』


 Demiseデミスの姿、吹き上がる砂煙、倒れる音。脳裏に焼き付いた映像が再生される。


【どうした、ヒカル】


 突然の声に驚いた。振り返ると、グレンがいた。


『グレン、どうしてここに……?』

【たぶんヒカルと同じさ。Demiseと戦った次の日は必ず見に来るんだ】


 グレンは珍しく深刻な顔をしていた。


『どうした、グレンらしくないじゃないか』

【テメェにオレの何がわかるっつーんだよ】

『す、すまん……』

【へっ、冗談だよ】


 意外だった。次の戦いのことばかり考えているものだと思っていた。初対面の印象は、荒々しい人という感じだったが、今はえらく真面目、というかなんというか。とにかく、イメージとは違う姿だった。

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