第103話 手に残った感触。

 帰り道を歩いているとアスカが手を振っていた。待っていてくれたようだ。


『よう、アスカ』

【ジンくんとなにか話してたの?】

『あぁ。俺がジンの兄と友達でな、そいつがジンのこと心配してて……。たぶんここに来ているんだろうけど、夜中に弟が部屋にいないってことを相談されていたんだ』

【ふふっ。弟思いの良い人なのね】

『あぁ、大事な友達だよ。絶対に守るさ……』


 それから無言で家まで歩いた。


【今日は初仕事お疲れ様】

『あぁ、お疲れ様。おやすみ』

【おやすみなさい。次回も期待してるわ】


 部屋に入り、レイヤー0へと戻る。


 ベッドに横になり、今日の戦いを思い出す。先を走る2人の背中。俺はあんな風に戦えるようになるだろうか。そして最後の一撃。俺は自分の手に残った感触を確かめていた。


『俺は戦える……戦えるんだ……!』


 拳を握りしめ、今一度、自分に言い聞かせる。次の戦いはいつだろう。この感覚を忘れないうちに、もう一度……!

 緊張の糸が切れたせいか、急激な眠気が襲ってきた。俺はこの眠気に抵抗せずに、襲われることにした。

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