第283話 空間。

『うわぁぁぁぁ!!』


 俺は暗闇の中へと落ちていった。数秒、空中でじたばたしていると俺の足に衝撃が走った。幸いにも、空中で一回転したおかげで頭を打つことはなかった。


『いったぁ……なんだ……ここは……?』


 薄ぼんやりとした明かりだけがあるその空間は、奥の方が真っ暗で、どこまでも続いているのかと思えるようだった。見上げてみたが、俺が落ちてきた穴は見えなくなっていた。とりあえず少し歩き回ってみた。


〈やあ、四季島シキシマヒカル〉


 振り向くと、そこには人型のデゼスプワールがいた。


『……!? デゼスプワール……!』


 俺はシャルを構え、戦闘態勢をとった。


〈正直、意外だったよ。一番の厄介者は鹿鳴屋ロクメイヤジュウザブロウかと思っていたのだが……。……君は特別な存在のようだ〉

『特別な存在……? そんなことはいい。お前を倒せば、すべてが終わるのだろう?』

〈そうだな。すべてが終わるさ〉

『じゃあ、始めようか』

〈落ち着きたまえ〉


 デゼスプワールが手を前に出し、横に振った。真っ暗だった空間が明るくなった。突然明るくなったせいで、少し目がくらんだ。ゆっくりと目を開く。


『……!? みんな!?』


 そこには地上で戦う仲間の姿があった。


〈外の様子が良く見えるだろう? 君が倒されるか、外の仲間が倒されるか。どちらが先になるかな?〉


 デゼスプワールはニヤリと笑った。


『もう1つあるだろう?』

〈なんだと?〉

『俺がお前をすぐに倒すか、だよ』

〈ほぉ……。やはり君は面白い〉

『行くぞッ!!』


 俺とデゼスプワールの戦いが始まった。

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