第305話 目覚め。

『……はっ!』


 俺は上半身を起き上がらせながら目を覚ました。


『今日は……っと……』


 スマートフォンで日付を確認する。


『あぁ、もう31日か……』


 8月31日……


『今年の夏休みもあっという間だったなぁ……。しかしまぁ、ずいぶんと長いこと寝てた気がする……』


 あくびをしながら頭をく。時間は12時。昼食の時間だ。


『コンビニでも行って、おにぎりかなんか買ってくるか』


 軽く着替えて、俺は外に出た。


 相変わらずセミの声がやかましい。もう8月も終わるっていうのに。この暑さはいつまで続くのやら。汗を流しながら、コンビニに辿り着いた。


『お、100円セールか……』


 おにぎりとアイスをカゴに入れ会計を済ます。コンビニから出ると、近くにあるベンチへ座った。


『やっぱり、アイスは炎天下えんてんかで食べるべきだよなぁ』


 袋から棒アイスを取り出すと、すぐに口に運んだ。頭が少しキーンとした。目をつぶって痛みに耐えていると、隣に人が来た。俺は荷物を自分の方に寄せた。運送屋だろうか。こんな暑い中に荷物を運ぶなんて大変だろうな……。


 それにしてもすげー筋肉だ。

 あ、俺と同じアイスを食べている。

 何故なぜだかまじまじと見てしまった。


 それに気づいたのか、その運送屋らしき男はこっちを向いて、ニカッと笑った。俺はビックリしてすぐさま目を反らした。そのままアイスを食べ終わると、コンビニのゴミ箱にアイスの袋とハズレのアイス棒を捨て、家に帰った。


 おにぎりをペロッと平らげ、再び横になる。


『あー、夏休みが終わらなきゃいいんだけどな……』


 アホみたいなことをつぶやきながらテレビをつける。早くも秋のファッションについて特集されている。いつもと変わらない時間を過ごしているうちに、外は暗くなっていった。

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