第177話 降参。

『どうだ、ジン!』


 落ちているジンの刀を見つけると、手の届かない場所へと蹴飛ばした。


【うっ……クソッ……】


 震えながら、ジンは立ち上がった。


『お、おい……! もう戦うのは無理だろう!?』

【まだだ……。まだ、戦いは……終わっていない……!】

『くっ……!』


 今のジンの姿を見て、さらに攻撃を加えることは俺にはできない。かといって、ジンも戦いを諦めないだろう。


【ヒカルさん……。殺すつもりで来てくださいよ……!】


 こうなったら……。


『ジン、すまない。俺の負けだ。降参する』


 ジンの刀を拾い上げ、ジンを抱き上げた。


【な、なにをするんですか!?】

『ベースまで連れて行くよ。ここまでボロボロにした責任ってのがあるからな』


 なにやらジンがごちゃごちゃ言っていたが、よく覚えていない。


 ベースに着くと、焦った様子のカイユウがいた。


『おぉ、来てくれたか』

【ヒカルさん! あんな内容の連絡が来たら、そりゃ飛んで来ますよ!】

【……ヒカルさん、なんて連絡したんですか?】

『ん? あぁ、時間がなかったからな』

【”ジンを殺してしまうかもしれない。来てくれると助かる。”ですよ。まったくもう……】


カイユウの後ろに、もう1人分の人影が見えた。


【本当にまぎらわしいことをする人ね】

『アスカ!?』

【俺一人じゃかかえきれなかったので、アスカさんにも連絡しておいたんですよ……】


 俺は誤魔化ごまかすように笑った。


『と、とりあえずジンの傷を診てやってくれ』

【はい、それは任せてください。ジンさん、こちらへ……】


 カイユウとジンはベースの中へと入り、治療を始めた。


【……どういうつもりなの?】

『実は……』


 俺は事情を説明した。


【なるほど……。あの時の力の正体を確かめるために、ね……】


 アスカはあきれたように言った。


『ご、ごめんって……』

【気持ちはわかるけど、やり方を考えなさい。下手したら戦力が2人減ることになっていたのよ】

『すみません……』


 俺は平謝ひらあやまりしていた。

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