第178話 引き金。

 ベースの扉が開き、カイユウが出てきた。


【ジンさんの治療、完了しましたよ】


 カイユウに続いて、ジンも出てきた。


『カイユウ、ありがとう。ジンも俺の我儘わがままに付き合わせてしまってすまない……』


 2人への感謝と謝罪をした。


【ヒカルさん、僕は正直あなたをあなどっていました。あのDemiseデミスを倒したって聞いてから、ヒカルさんと戦って、自分の力を示したい。そう思う気持ちもありました。今回は僕の負けです】

『ジン、正直に言ってくれてありがとう。ジンじゃなかったら、あの力を引き出す引き金に確証は持てなかった』

【結局、その引き金っていうのは何だったのかしら?】

『あぁ、それはな。”死”との対話だ』


 全員が唖然あぜんとしていた。


『あれ……? わからなかったか……?』

【少なくとも僕には理解できなかったですね。僕はヒカルさんに殺されかけて”死”を感じましたが、同じような力を出すことはできませんでした】

『それは俺の殺し加減が足りなかったのかもしれない。すまない』

【殺し加減って……。物騒な会話ですね……】


 カイユウが呆れるように言う。


『言葉にするのは難しいんだが……。”死”が本能に語りかけて来るんだよ。そのまま受け入れたら”死”が待っている。だから、受け入れずに本能であらがうんだ。そうすると体中から力があふれ出てくるんだ』


 俺は力説したが、手応えはなかった。


【そ、そうなのね。とにかく、2人とも無事でよかったわ】

【えぇ、そうですね。ヒカルさんはあまり無茶しないでくださいよ】

『あ、はい……。すみません……』


 本日何回目かわからない謝罪をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る