第234話 いつも通り。

『いつもと変わらない、か……。武道の心得があるとそんなもんなのかな』


 そんなことをつぶやきながら、歩き続けた。


【ヒカル!】


 背後から声が聞こえた。振り返ると、そこにはグレンがいた。


『おう、グレン』

【なにしてんだ? 飯でも食ってたか?】

『いや、なんとなく歩いてただけだよ。グレンは?』

【なんだ暇人かよ。俺はそこのラーメン屋で飯食ってたんだ】

『あー、”異次元”か! 美味しいよな、あそこ』

【たまに無性に食べたくなるんだよな。……あぁ、そうだ。ヒカルのことだから、次の戦いのこと考えてソワソワしてるんじゃないかって思ってたけど、どうなんだよ?】


 ギクリとした。


『よ、よくわかってるじゃないか』


 グレンは大きく笑った。


【あっはっはっは。お前らしいよ。何をしたって時間は過ぎていくものさ。あと9日でできることなんてたかが知れてる。いつも通り、目の前の敵を倒すだけだ】

『それ、さっきジンも似たようなこと言ってたな……』

【ジンもいたのか。戦い方は違っても、考え方は似ているのかもな】


 グレンはイタズラに笑った。


【満腹になったし、そろそろ帰るわ】

『あぁ、それじゃあな』


 グレンは停めてあった原動機付自転車にまたがると、走り去って行った。


『俺は考えすぎなのかな……』


 コンビニでおにぎりと小さなサラダを買い、家へと戻った。食べ終わり、シャワーを浴びて、少しテレビを見てからベッドで横になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る