第235話 格好悪いことじゃない。

 8月192日……


 11時頃に起床した。少し早めの昼食をとり、外出した。今のうちに、この世界を歩いておきたくなった。戻ってしまったら、ここのことなんて忘れてしまうのだろう。そんなことはわかっていても、俺は歩き続けた。


【ヒカルさーん!】

『オトハちゃん!』


 ちょうどスーパーから出てきたオトハちゃんに会った。


『ここのスーパー使ってるんだね』

【夕飯のための買い出しです! ここ、今日は玉子が安いんですよー】

『へー、安い日とか気にしたことなかったな……』

【これからは男性もこういうの気にしていかないとダメですよー】

『そ、そうなのか。肝に銘じておくよ』


 世間話をし、最後にあの話をしてみた。


『あのさ……8月200日のことなんだけど……』

【最後の戦い……ですよね……】

『怖かったりしないのかい?』

【怖くない、って言ったら嘘になっちゃいますけど……。ヒカルさんたちの方が怖いんじゃないんですか? 私とかカイユウくんとか、サポートの人たちはとにかく前で戦ってくれる人を支えることしかできませんからね。私たちが怖がってる場合じゃないです!】

『正直、俺は怖いんだ……。だから、みんなにこのことを聞いて怖さを紛らわそうとしている。格好悪いよな……ははっ……』


 力無く笑う俺を見てか、オトハちゃんは大きく首を横に振った。


【そんなことないですよ! 怖くない人なんていないと思います! それでも頑張れるのは、他のみなさんがいるからなんですよ。だから、怖いってことは別に格好悪いことじゃないんです】

『そうか……ありがとう。オトハちゃんには前から励まされてばっかりだな』

【ふふっ、そうですかね。それじゃ、今度なにかでお返ししてくださいね】

『あぁ、わかったよ』

【私はそろそろ帰りますね。それでは、また】

『買い物帰りにごめんね。それじゃ』


 オトハちゃんは会釈をすると、歩いて行った。

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