第182話 雨模様。

 8月176日……


 窓を叩く雨の音で目が覚めた。


『予報じゃ晴れって言ってたんだけどな……』


 今日も予報が外れ、大雨だ。普段なら、8月の暑さがやわらいで嬉しいところなのだが、今の状態では素直に喜べない。雨の降る外を見ながら、少しボーッとしていた。ふと我に返り、レイヤースペースへと向かった。


 ベースには今日もエンジがいた。


『エンジ、お疲れ様。今日は一人か?』

【ヒカルさん、こんにちは。ハルヒは予定があるとかで、今日は一人なんですよ】

Demiseデミスのことは何かつかめたか?』

【いえ。それが、なにも……】

『そうか……。やっぱり、レイヤー0の雨が影響しているのかな』

【すみません、お役に立てなくて……】

『いや、大丈夫だ。イツキさんも言ってた通り、あんまり気にしすぎるのも良くないぞ』

【はい、わかりました。明日が本番ですが、何かしら役に立てるようにがんばりますね】

『あぁ、よろしく頼む』


 俺はエンジの肩を叩いた。


【それじゃ、僕はこのへんで】

『あぁ、また明日な』


 エンジは頭を下げ、帰って行った。俺は今日もりずに、意識的に”覚醒”状態になれるかを試した。結果は昨日と変わらずだった。意識していることが”覚醒”状態になれない原因かもしれない。本能的なものだから、いくら訓練しようが再現は難しいのか。なかば諦めつつ、俺は家に帰った。


 レイヤー0に戻り、外を見る。小降りにはなっているものの、雨は止んでいなかった。


『明日か……』


 雨の音を聞きながら、俺は眠った。

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