第131話 ケガ人あるところに我はあり。

『オトハちゃん、改めてありがとう。本当に、全く痛くないよ』

【それはよかったです! 結構大きな傷だったから、焦っちゃいましたよ】

『え……。そんなにだったか……?』


 アスカが目をそらす。


【し、仕方ないじゃない。負けたくなかったし……】

【……で、でも! 私を事前に呼んでおいておくれたのは、アスカさんなんですよ!】


 オトハちゃんがアスカのフォローをしていた。


『ははっ。まぁ、傷は治ったし、大丈夫さ』

【……ごめんなさい……】


 アスカがボソッとつぶやいた。


『え? なんだって?』

【なんでもない!】

『なんなんだよ……』


 本当は聞こえていたが、もう一度謝るところを見たかっただけだ。

 アスカに負け、これでジン以外の5人に負けたことになる。ジンにも勝てる気がしないな……。


【ヒカルくん。ワタシたちに負けたからって、そう落ち込むことはないわ。ワタシたちが戦うのはDemiseデミスなんだから】

【そうですよ! みなさんと戦ったからこそ、心強い味方がいるってことを知られたんじゃないでしょうか!】

『……オトハちゃんにまで励まされるとは。こりゃ男として情けないな』

【い、いや、そんな……】


 慌てるオトハちゃんを見ながら笑った。


『そしたら、俺はもう帰ろうかな。疲れたし』

【わかったわ。ワタシは、もう少し射撃の練習をしてから帰ろうかしら。オトハちゃんは?】

【私も帰ります。今日は私がご飯を作る日なんですよ】

【あら、そうだったのね。忙しいのに、ごめんなさい】

【いえいえ、大丈夫です! ケガ人あるところに私ありですから!】


 アスカは武器を持って外へ。俺とオトハちゃんは帰る準備をした。帰りに改めてアスカとオトハちゃんに感謝を伝え、それぞれ帰路についた。


 家に帰ると、ベッドへ倒れ込んだ。どう言われても、悔しいものは悔しい。勝利まであと一歩だった。あのツメの甘さが俺の弱点だろう。


『それにしても、オトハちゃんの治癒能力はすごいな。全く痛くない』


 矢が刺さったと思われる場所をさすってみたり、鏡越しに見てみたが、キレイに治っているようだ。

 疲れ切った体はとても重く、電池が切れたおもちゃのように動かなくなった。再びベッドの上に倒れ込んだ俺は、そのまま眠ってしまった。

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