第191話 赤。

 ショーマが案内してくれた店だが、看板もないところだった。


『看板も何もないけど、ここであってるのか?』

「あぁ。実は知り合いの店で、開店直前なんだ」

「だからボクも食べことないってことだったのかー」

『そういうことか。納得したよ』

「さっ、入った入った」


 俺たちはショーマに続いて店内へと入った。


 店内はカウンター5席とテーブル席が2席。各席には、追加でかけられるように激辛ソースと思われる瓶が何個も並んでいる。天井には空気がもらないように、大きな換気扇が設置されていた。


「こんばんはー!」

「いらっしゃい! 今日のお客さんは君たちだけだ。ゆっくりしていってくれ」

『こんばんは。開店前にお邪魔しちゃって大丈夫ですか?』

「大丈夫だ! 言い方が悪いが、君たちには練習台になってもらおうと思ってね」


 店主はウインクをしている。


『なるほどね……』


 開店前に、お客様に料理を提供する練習をしたいってとこか。


「こんばんは。美味しい料理を楽しみにしてますね!」


 レンは純粋な笑顔で、店主にプレッシャーを与えていた。俺たちはカウンターに座り、メニューを開く。


 赤い。

 とにかく赤い。


 流石は激辛専門店と名乗っているだけはある。料理の内容は、和、洋、中華となんでもありだ。激辛海苔巻き、激辛ハンバーグ、激辛炒飯チャーハン等々……。ズラッと並ぶメニューを見ること数分、注文する料理が決まった。


『俺は炒飯にするよ』

「ボクはスープとハンバーグにしようかな」

「じゃあ、オレは……。うどんだな」


 注文をすると店主は厨房へと入っていった。厨房からは、自分に気合を入れているような声が小さく聞こえた。その後は他愛たあいもない話をしながら、料理の到着を待った。

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