第192話 辛。

 話をすること十数分、料理が到着した。思った通り真っ赤。……ではなく、普通の料理のように見える。だが、香りはやはり鼻をしびれさせるような感じだ。料理と一緒に牛乳が出された。


『牛乳……?』

「辛いものを食べたあとに、辛さを消そうと水を飲むのはあまり得策ではないんだ。辛さには牛乳の方が効くんだよ」

『へぇー。そうなんですね』

「他にはヨーグルトとかも効果的なんだよ、ヒカルくん」

「そうそう。キミ、よく知ってるねぇー」

「ボク、食べるの好きで……。あっ、店内とか料理の写真って撮っても大丈夫ですか?」

「あぁ、いいよ。ぜひ、Sephirotセフィロトなんかでも拡散してくれ」

「ありがとうございます!」


 レンは、意気揚々と写真を撮り始めた。


「レンは相変わらずだなぁ」

『そうだな』


 レンは照れくさそうに笑った。


「2人とも、食べたら感想頂戴ね!」


 レンはメモをかたわらに用意していた。手を合わせ、食事の挨拶をする。


「『いただきます!』」


 全員が同時に一口食べた。美味うまい。”辛い”よりも”美味い”が先に頭に浮かんだ。二口目、三口目と口に運ぶ。四口目をスプーンですくったその時。それは口の奥。さらに食道の奥。胃の方から込み上げてくる。


 辛い。

 猛烈に辛い。


 本当に火を吹くような辛さだ。急いで牛乳を口にする。


『はぁ……はぁ……。辛さが時間差でやってきやがった……』


 ショーマも同じ反応をしている。


「やべぇ辛さだな、これ……」


 汗がき出してきた。視界の端には、不気味に笑う店主の姿が見えた。Demiseデミスとは違う戦いが始まっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る