第238話 絵画。

 リオンさんのいるところはだいたい予想がつく。小さい建物の屋上を伝って、ビルの屋上を目指す。


『よっ、と……』


 10階建てのマンションの屋上に登り、周りを見渡す。


『ビンゴ……っ!』


 少し離れたビルの屋上に人影が見えた。一度マンションから降り、そのビルを目指した。


『ふぅ……。リオンさん、お疲れ様です』

【おぉ、ヒカル! ビックリしたなぁ、もう】

『驚かせてすみません。ミチヤにリオンさんが来てるって聞いて……』

【まぁ、別にええよ。どうしたん?】

『特別なにかあるわけじゃないんです。ただ、みんなと話しておきたいなってだけなんです』

【そういうことか。元の時間に戻ったら、俺が恋しくなってまうで】

『戻ったらキレイさっぱり忘れてますよ』

【忘れられないような思い出残したろか?】

『それは遠慮しときます』


 2人して笑った。リオンさんの後ろにキャンバスが見えた。


『ここの風景を描いているんですか?』

【あぁ、これか。半分正解やな】


 俺が覗き込むと、そこにはここの風景とみんなの姿が描いてあった。


『うわぁ、すごいですね! さすが画家を名乗っているだけはある』

【そうやろ!】


 リオンさんは自慢げにしていた。


【センターは俺やけどな。作者の特権や】

『いい絵ですね……』

【ベースに飾っておこう思ってな。もし、またここに来るやつがおったときに、前にも戦ったやつがおったんやぞって証明になるやろ】

『面白いこと考えますね』

【もっと尊敬してええんやで】

『元の世界に戻っても、きっとリオンさんの絵にかれる気がしますよ』

【その時は特別にモデルにしてあげてもええから、声かけてな】

『考えておきます』

【泣いても笑っても、あと1週間や。絶対に戻ろな】

『はい……!』


 リオンさんに背中を叩かれた。パワーをもらった気がする。


『お邪魔してすみません』

【いや、ええよ】

『それじゃ、俺は行きますね。絵の完成、楽しみにしてます』

【おう、気合い入れて描くから楽しみにしとき!】


 俺はビルの屋上をあとにした。

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