第203話 暴君、魔王、死神。

 グレンとリオンさんがいるところは、この前ショーマに連れ行ってもらった激辛専門店の『香味辛々こうみしんしん』だった。あの瓶の正体は、唐辛子の抽出部を濃縮した超激辛ソース。本来なら数十倍に薄めて使うものだ。それをそのまま、しかも大量に摂取したら、そりゃああなる。

 フトゥーロは奇声を上げ続ける。


【暴君も魔王も死神も裸足で逃げ出すレベルやで。好きなだけ味わうんやな!】

〈アジわエェェェェェ!!!〉

〈〈〈〈ええええええェェ〉〉〉〉


 なりふり構わずフトゥーロは突っ込む。リオンさんは上空に瓶を投げる。フトゥーロはそれを真っ先に排除した。


〈…ェェェェェ……ン………〉


 フトゥーロはその場に崩れた。グレンの剣が”コア”を貫いていた。フトゥーロの体は動かなくなり、十数秒のうちに砂のようになった。


【はぁ……はぁ……】

【ふぅ……】


 リオンさんとグレンは目線を合わせるとハイタッチをした。その背後に、デゼスプワールの姿があった。


【リオンさん! グレンさん! 後ろ!】


 みんなが叫んだ。2人はそれに気付き振り返ったが、武器を構える気力は残っていなかった。デゼスプワールは拍手しながら、語り始めた。


〈素晴らしい。まさか”フトゥーロ”が倒されるとはな……。戦場で成長し、喰うことで相手の能力を取り込み強くなることを理想としていたのだが……。君たち相手では上手くいかなかったようだ。残念だよ〉

【そいつは残念やったなぁ。で、今からアンタとやりあうんか?】


 デゼスプワールは首を横に振った。


〈そんなことはしないよ。焦るんじゃない。次は10日後。8月190日にまた会いに来るよ〉


 砂となったフトゥーロを回収し、そう言い残すと、消えていった。全員が緊張から解き放たれた。


【時間は動き出しています】

【エンジ、ありがとう。グレン、リオン。お疲れ様】

『本当にお疲れ様です』

【オトハちゃん、カイユウくん。2人の傷を診てやってくれ】

【【はい!】】


 2人は治療を始めた。


 俺たちは、勝利したんだ。

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