第202話 歯ぎしり。

【クソ野郎が……!】


 フトゥーロはうごめき、腕が変化していく。


〈クワせろ……!〉


 4本の腕の手が小さな口に変形し、ガチガチと歯を鳴らしている。4つの小さな口がグレンを襲う。剣でそれらをはじきながら、反撃のタイミングを待つ。


〈ク…そ…やろー……〉

〈〈〈〈ヤロー〉〉〉〉


 本体の声に続いて、4つの小さな口からも声が聞こえた。地面をえぐり、執拗しつようにグレンを攻撃する。


『ジュウザブロウさん!』

【まだだ……】


 ジュウザブロウさんは腕組みしながら、戦況を見守っていた。


【グレン! こっちや!】


 リオンさんの声に反応し、グレンはフトゥーロから離れた。リオンさんが突っ込んだ建物へと逃げ込むが、フトゥーロが追ってくる。


〈くわせろォォォォ!!!〉

〈〈〈〈ォォォオオオ〉〉〉〉

【そんなに喰いたいんやったら、これでも喰ったらどうや!】


 赤い液体の入った瓶を、フトゥーロの口にめがけて投げ込む。それらを咀嚼そしゃくしたフトゥーロは叫びだし、足元がふらつき始めた。


〈キェェエェェェ!!!〉

【随分と美味しかったみたいやなぁ。おかわりはたんまりあるで】


 両手に瓶を持ちながらリオンさんが出てきた。


『あそこは……。香味辛々こうみしんしん!?』

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