第267話 弾丸。

 ラヴの左腕から白い煙が上がっている。ダメージを与えたエンジを含め、全員が驚いていた。それは、デゼスプワールも例外ではない。頬杖ほおづえをやめ、ラヴの様子を見ている。デゼスプワールにとって、予想外の事態であることは容易に分かった。


〈ラヴ、そいつを殺せ〉


 デゼスプワールは冷静に指示をする。ラヴは体勢を整えると、エンジに向かって動き出した。


『みんな! エンジを守るんだ!』


 全員がエンジの前に立ち、できるだけラヴから離れるようにした。ついに見つけた突破口。これを絶対に無駄にはできない。俺とグレンも前線へと合流した。


【デゼスプワールの驚きようを見ると、エンジの攻撃が通ったのは偶然では無さそうだな】

『あぁ、そうだな。ただ、何故エンジの攻撃が通ったのかはわからないが……』

【次はそう簡単に当てさせてはくれないでしょうね】

【ヤツの動きを止めて、そこを狙えば……】


 俺たちが話している間にも、ラヴは迫ってくる。


【とりあえずオレが食い止める! エンジは頼むぞ!】


 グレンが飛び出す。傷ついた左腕を執拗しつように攻める。


【エンジ、構えるんだ】

【え……でも、グレンさんが……】

【大丈夫。もしグレンさんに当たりそうになっても、あの人なら絶対に避けてくれる】

『ジンの言うとおりだ。エンジ。安心してぶっ放せ』


 エンジはうなずき、銃を構える。


【当たれ……ッ!】


 銃から放たれた弾丸は、一直線にラヴに飛んでいった。グレンはギリギリでそれを避け、ラヴへの道を作った。


【よし! さすがはグレンさん!】

【行けッ!】


 全員が祈るように弾丸の行方を見届けた。

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