第199話 くう。

 グレンの剣は、くうを切った。フトゥーロは体を変形させ回避をしていた。本能的なものなのか、それは異質な姿だった。突きの体勢のまま、隙だらけのグレンの脇腹にフトゥーロの打撃が放たれた。


【……ッぐぁッ!】


 その衝撃でグレンは近くの建物へと吹き飛ばされた。


〈イッキに…きめル…〉

【グレン!】


 リオンさんが叫ぶと、起き上がるグレンの姿が見えた。


【ちょっとそこで休んどきや。俺も戦わせてもらうで!】


 素早い動きでフトゥーロを翻弄ほんろうする。そして、隙あらば短剣でダメージを与えていく。フトゥーロも苦しそうだ。


〈デェェェェ!!〉


 フトゥーロは奇声を上げると急に動き出し、リオンさんに襲いかかった。リオンさんの攻撃をものともせず、右腕の拳を振り回す。リオンさんは下がり、冷静に様子をうかがう。


【こいつは”完成型”って言う割には、まだまだ未完成やな。今のままやったら、落ち着いて戦えば問題はなさそうや】


 怖いのは一撃の重さ。グレンを吹き飛ばした一撃は、何回も受けられるものではない。


〈デぇぇぇぇぇぇ!!〉

 再び奇声を発した。攻撃が当たらずに、いらついているのだろうか。リオンさんがさっきと同じように高速移動しながらの攻撃をこころみる。


〈…う…くう……くう………〉


 なにやらボソボソと言っている。リオンさんは警戒しつつ、攻撃を加える。


〈くうデェェェェ!〉


 フトゥーロは叫ぶと、頭部が巨大化させた。


【なんやそれ……!?】


 フトゥーロは口を大きく広げた。それは、リオンさんの行動範囲を全て覆うような大きさだった。


『リオンさん!』


 大きな影がリオンさんを包み込んだ。

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