第200話 見たことのない。

 フトゥーロの巨大な口が、リオンさんのいた周辺を丸ごと包み込んだ。俺の位置からだと、リオンさんの安否はわからない。フトゥーロが顔を上げ、咀嚼そしゃくを始める。地面は大きくえぐれていた。フトゥーロが口の中のモノを飲み込んでいくと、巨大化していた頭部が元通りの大きさに縮んでいった。フトゥーロの顔が縮むと、奥にリオンさんとグレンの姿が見えた。


【グ、グレン。ありがとう。突っ込んで来てくれへんかったら、今頃あの口の中やったわ】

【ふぅ。少し休ませてもらったからな。だいぶ動けるようになってきた】


 グレンは肩を回しながら、フトゥーロに狙いを定める。


〈ン…ん…〉

【食事中のところすまねぇが、今度こそやらせてもらうぜ】


 グレンは剣を突きつけた。


〈ヤル…くう…〉


 再び巨大化した頭部がグレンを狙った。


【それはなぁ、もう見たことあるんだよ!】


 グレンがフトゥーロの脚を切断すると、フトゥーロはバランスが崩した。しかし、脚はすぐに再生し、倒れる寸前で持ちこたえた。フトゥーロはグレンに手を伸ばし、捕まえようとするも、グレンの斬撃によってはばまれた。グレンとリオンさんの方が優勢だ。フトゥーロは一度下がり、頭をかしげた。


〈みたコトアル…ミタことナイ……〉


 フトゥーロはそうつぶやき、うなりを上げた。地響きが起き、フトゥーロは姿を変形させた。腕が4本に。脚は6本に増えていた。


〈ミタことナイ……。デェェェェェ!!〉


 猛烈な勢いでフトゥーロは走り出した。

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