第303話 最後の仕事。

 建物の中へ入ると、そこは静かな空間だった。俺の荒い息遣いきづかいと、足を引きずる音だけが聞こえる。


『はぁ……はぁ……』


 周りを見ながら、真っ直ぐに進む。目の前に台座が見えた。


『ティア、あれか?』

〈はい。あそこに私を置いてください〉


 もうすぐ。

 もうすぐだ。

 あそこまで行けば、すべてが終わる。


 最後の力を振り絞り、俺は前に進んだ。

 あと数メートル。


『……くっ……』


 もう体は限界だ。

 倒れ込むようにして台座へと辿り着いた。

 台座の上にティアを置いた。


『ふぅ……これでいいのか……?』


 意識が朦朧もうろうとしながら、最後の仕事を終えた。


〈ありがとう、四季島シキシマヒカル。貴方あなたは本当の勇者です〉


『へっ……ありが……とよ……』


 正直、もう限界だった。


〈それでは”時”を戻します。正しい”時”の中へと導きましょう〉


 遠くでティアの声が聞こえる。


 俺は光に包まれ、そのまま倒れた。

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