第32話 階層世界。

 ジュウザブロウさんが質問を投げる。


【今、オレたちがいるこの場所はどこだと思う?】

『どこって……。そりゃあ、向日葵ヶ丘ひまわりがおか駅……?』

【正解だ。だが、正確に言うと違うんだ】

『正確に言うと……?』


 周りを見渡しても、ここは向日葵ヶ丘駅だ。間違いない。駅前、というのが正解だったのか? 俺は頭をひねっていた。その間にジュウザブロウさんは、壊れた”オリオンカフェ”から黒板とチョークを持ってきていた。


【口で言っても伝わりきらんと思うから、この黒板を使うぞ。この世界には階層があり、これを”レイヤー”という。で、それぞれにあるこの空間を”レイヤースペース”と言うんだ】


 ジュウザブロウさんはさらさらと黒板に描いていく。

 階層……? レイヤースペース……? とにかく最後まで聞いてみることにした。


【今、8月140日だーって言っている世界。これを現実世界と呼ぶ。この現実世界はこの”レイヤースペース”で言うと、”レイヤー0”にあたる場所だ。階層が上がると”レイヤー1”、”レイヤー2”、”レイヤー3”……となっていく。ここまでわかるか?】


 俺は頷きつつ、話を聞く。


【レイヤー1から先のレイヤースペースには、レイヤー0、現実世界の地形や建物がそのままコピーされている。さっきの答えが正確には違う、と言ったのは、ここが2の向日葵ヶ丘駅だからだ】

『……!?』


 そんなファンタジーな話が信じられるか! ……と思ったが、目の前で見た光景や、おかしくなった8月を見てきたから、あながちあり得ない話ではないんだと思った。

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