第9話 月夜の晩に。

 家の近くに女の子が1人立っていた。俺を待ってくれてる一途な女の子、なんて妄想しながら横を通り過ぎた。


【9月ってあると思う?】


 女の子の声が聞こえた。振り向くと、女の子が俺の方を見ていた。


『……え?』


 俺が答えに迷っていると、女の子は続けて言った。


【9月に行きたい?】


 一昨日から8月から抜け出したいと思っていた俺は、こう答えた。


『あぁ、8月はもううんざりだ』

【そう……】


 女の子は少し笑ったように見えた。月明かりに照らされ、少し女の子の顔が見えた気がした。


 バキッ!


 後ろから異音がしたので振り返った。しかし、何もないようだった。視線を女の子の方に戻すと、女の子の姿はもうなかった。気になって5分ほど周りを探してみたが、見つかる気配はなく、俺は家へと帰った。

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