第63話 2度目の正直。

『ミチヤ、すまん。作ってもらった剣なんだが。あの……壊れちまったんだ……』

【あー、合わなかったんだね。まぁ、しょうがないよ! 次はこれも試してみてよ】


 武器の破損は慣れっこなのか、ミチヤはすんなりと受け入れた。それどころか、破損を見越して新作まで持ってきてくれた。ミチヤから新作を受け取り、布を開いていく。そこにあったのは、物干し竿のような棒であった。


【ヒカルが野球やってたって言うから、棒状のモノって思って作ってみたんだ。そのままバットみたいな形状だと使うのが嫌かなって思って、棒術で使いそうな感じに仕上げたんだ】


 手に取って感触を確かめる。長さは俺の身長と同じくらいだ。


【棒術って、基本的に6尺、つまり180cmくらいなんだって。僕が作ったのは、それを少し短くしてみたんだ。あとは粒子集中りゅうししゅうちゅうで伸縮できるようにしてあるから、そのへんも試してみてね】


 嬉しそうに語るミチヤ。


『ありがとう! 大切に使わせてもらうよ! ……ただ、相性の問題もあるから……。それは……』


 さっき粉々になってしまった剣を思い出し、口ごもっているいると、ミチヤは右手を開いて前に突き出して言った。


【そんなの全然大丈夫! 相性が良いモノを作り上げたときの嬉しさを知ってるから、それまでの苦労なんて、そのときのスパイスでしかないよ】


 ミチヤは笑っている。


『ミチヤは本当にすげぇな……。早速使わせてもらうよ』

【使ってあげてください! お願いします!】


 ミチヤはお辞儀をし、後ろへ下がっていった。この棒にも、力を流し込むための”管”がある。


『よし……』


 もう一度構え、集中する。


『力を……流し込む……!』


 粒子集中りゅうししゅうちゅうをし、力を込めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る