第165話 最後の手段。

【ジンくん!】


 イツキさんがジンくんを助けに行こうとしたその時、背後からの打撃でイツキさんも吹っ飛んだ。同じタイミングでフラフラの状態のグレンさんが合流した。


【イツキ……! なんなんだよ……。こいつは……】


 グレンさんは悔しさをあらわにしていた。流石に戦えるまでは回復できなかったみたい。本人はやる気満々だったけど、カイユウくんに止められていた。ジュウザブロウさんがDemiseデミスから降りてくるなり、ワタシたちにこう言った。


【すまない、あとは頼んだぞ】


 その時、ワタシはジュウザブロウさんの言葉の意味を理解することはできなかった。ジュウザブロウさんは呆気あっけにとられているワタシたちを置いて走って行った。ジュウザブロウさんはDemiseに両手を付けると、強力な纏陣テンジンを発動した。そして、ワタシたちの目の前から消えた。

 後から知ったけど、ジュウザブロウさんはDemiseを巻き込んでレイヤー3に移動したらしいの。そこでDemiseを撃破したらしい。レイヤー2と比べ、さらに身体能力の強化をされるレイヤー3でなら勝てると判断したのでしょう。ジュウザブロウさんはフラフラになりながら帰ってきたわ。結果的には勝利したけど、ジュウザブロウさんはその反動で倒れ、治療中。


 …


【……これが、ヒカルくんが眠っている間の話】


 衝撃的な話だった。ジュウザブロウさんがレイヤー3に行かざるを得ない程のDemiseだったんだ。


『そうだ、時間はどうなってる?』

【ちゃんと動いているわ】


 アスカは時計を見せながら俺に教えてくれた。


『そうか、よかった……。って、よくもないか……』


 ジュウザブロウさんが倒れ、他のメンバーも大きく傷ついた。時間が元の時間に戻ることもなかった。不幸中の幸いだったのは、あのDemiseをレイヤー0へと逃さなかったことだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る