第300話 歩みを止めてる場合じゃない。

―――レイヤー7

『これは……』

【なんだよ、これ……】


 そこに広がっていた光景は、廃墟のようにボロボロになった駅前だった。


〈レイヤースペースの環境に、建物が耐えきれなくなった結果です〉

【こんな環境だと、纏陣テンジンしていないとまともに居られないですね……】

『レイヤー0の世界とは違うのはわかっているが、こんな姿を見ると何か胸を締め付けられるような感じがするな……』

【2人とも、行けるなら行くぞ。感傷にひたっている場合じゃない】

『あぁ、すまん。行くか』


 粒子集中りゅうししゅうちゅうをしようとしたその時だった。


【すみません……。僕……もうダメみたいです】

『ジン!』


 ジンはフラフラになっていて、立っているのもやっとのようだ。


【いつも足を引っ張ってしまって……。本当に情けない男だ、僕は……】

【ここまで来ただけで十分スゲーよ、お前は】

『あぁ、そうだ。それに足を引っ張ってばっかじゃないぞ』

【この前なんて、オレを助けてくれたじゃねぇか】

【お二人とも、ありがとうございます……。僕を置いて、上を目指してください】

夜叉小路ヤシャノコウジジン、お疲れ様でした。貴方あなたの存在は、仲間に安らぎを与えていました〉

『ジン……』

【あとは、お願いします】


 俺はジンの手を握り、別れを告げた。ジンは静かに目をつぶった。


【……行くぞ、ヒカル】

『あぁ……』


 俺たちは上へと進んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る