第298話 最果ての地の在り処。

『勇者だって……?』

【”最果さいはての地”へと行けるだけの素質のある勇者が必要です】

【じゃあ、オレが行こう】


 ジュウザブロウさんが真っ先に名乗り出る。


鹿鳴屋ロクメイヤジュウザブロウ、貴方あなたはダメです】

【何故だ! オレでは力が足りないというのか!?】

【そうではないです。貴方にはここで残ったみなさんを守っていて欲しいのです。正直、私でも想定できない事態が発生する可能性もあります】

【ぐっ……そうか……】

【3人、私が選びます。

 神々谷院コウゴウヤイングレン。

 夜叉小路ヤシャノコウジジン。

 そして、四季島シキシマヒカル】


 俺を含めた3人が前に出る。


【ぼ、僕ですか……?】

【神様に選ばれたんだ。胸を張れ、ジン】


 グレンがジンの背中を叩く。


【貴方たちには、”最果ての地”に行くための力があります】

『肝心の”最果ての地”ってのはどこにあるんだ?』

【それは……】


 ティアは上を指さした。


【空……?】

【違います。レイヤー10に”最果ての地”はあります】

『レイヤー……』

【10だって……!?】

【はい。包み隠さずに伝えましょう。”最果ての地”にある”とき聖殻せいがく”に辿り着けるのは、おそらく1人でしょう】

【つまり、あとの2人は予備……ってことですか?】

【そうです。もし3人とも途中で力尽きることがあったなら、それは私の見る目がなかった、ということです】

『手厳しいな……』

【四季島ヒカル、手を出しなさい】

『こうか……?』


 左手のてのひらを上にして、ティアに差し出す。


【そのまま……】


 アスカの胸のあたりから、光の球が出てきた。その瞬間、アスカは全身の力が抜けたように倒れた。イツキさんとリオンさんがとっさにアスカの体を支えた。

 光の球は俺の掌の上にゆっくりと乗った。暖かく、心が落ち着く気がする。


天照栖アマテラスアスカの体のままでは”時の聖殻”までは辿り着けません。私の本体を貴方に託します〉

『その声……』


 俺が”負の感情”に支配されそうになったときに聞こえた声だ。


『俺は女神様に助けられてばっかりだな……』


 軽く笑い、みんなの方に体を向けた。


『それじゃ、いってきますね』

【今までありがとよ】

【また、どこかでお会いしましょう】


 俺たち3人が残った仲間へ声をかける。


【こっちはオレたちに任せておけ】

【僕もそっちに居たかったぜ】

【俺らの分まで頼むで】

【3人とも、お気をつけて……】

【俺たちの世界を頼みます!】

【またラーメン食べましょうね】

【オイラのパワーも託すッスよ!】

【最後まで、武器を大事にしてくれてありがとうございました】


 みんなからの言葉をもらい、俺たちは出発した。


『じゃあな、アスカ』


 最後に、倒れるアスカに声をかけた。


 遠くでは轟音ごうおんが鳴り響いていた。

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