第167話 帰る者、残る者。

 誰もが口を開くことができなかった。その時だった。


【ほら、みんな! なに暗い顔してるんだ! 顔を上げろ! 俺たちは勝ったんだぞ!】


 ジュウザブロウさんの声だった。みんな驚いて顔を上げる。だが、ジュウザブロウさんは眠ったままだった。


【イツキちゃん、声似すぎやで。ほんまビックリしたわ】


 声の主はイツキさんだった。


【す、すまん……】

【えぇんやで。ほら、みんなも暗い顔やめぇや。ジュウザブロウさんが目を覚ました時にそんな顔していたら、二度寝してまうで】


 場を和ますように2人は口を開いた。


【あとは僕とリオンさんで見ておくし、みんなは帰って体を休ませるんだ。次の戦いがいつかもわからないしな。休めるときに休んでおくんだ】

【そうや。ほらほら、みんな出て行った出て行った】


 リオンさんが両手を広げながらみんなを外へと追いやる。みんなが外に出たことを確認すると、ベースの扉を閉めた。

 外に出た全員が顔を見合わせる。


『……そしたら、帰ろうか』

【みんな、お疲れ様。十分に休息を取るのよ】


 ボソボソと別れの挨拶を口にしながら、解散していった。残ったのは、俺とアスカだけだ。


【ワタシたちも帰りましょうか】

『いや、俺はもう少し残っていく』


 俺はベースの方へと目を向けた。


【じゃあ、ワタシも付き合うわ】


 俺たちはベースの中へと戻った。

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