第166話 容態。

【ヒカルくん、動ける?】

『あぁ、大丈夫だ』


 俺は立ち上がり、体の調子を確認した。今のところ、支障は無さそうだ。


【そしたら、ベースに戻りましょうか】


 俺はうなずき、ベースへと向かった。


 ベースに戻ると、外のベンチに落ち込んだ様子のジンとグレンがいた。


『2人とも大丈夫か……?』


 ジンは反応する気力が無いようだった。自分のせいでグレンとジュウザブロウさんを危険な目に遭わせてしまったと、責任を感じているのだろう。


【……よぉ、ヒカル。大活躍だったみたいだな】

『そうらしいな。自分でもよくわかってないけど。それよりグレン。ジンを守ってくれてありがとう』

【そんなの当然のことだ。ただ、自分の体がこんなにヤワなものだとはな。情けないったらありゃしないぜ……】

『そう落ち込むなよ。あれは、相手が悪かった』


 グレンの肩を軽く叩き、ベースの中へと入った。


【ヒカル、ようやったなぁ!】

【ヒカルくん! 体は大丈夫なのかい?】


 リオンさんとイツキさんが駆け寄ってきた。


『はい、俺の方は大丈夫です。俺のことより、ジュウザブロウさんが……』


 そこには、横たわるジュウザブロウさんがいた。目を閉じたまま、ピクリとも動かない。


【大丈夫。息はしてるよ。今は眠っているんだ。ヒカルくんが来るまではうなされていたんだが、君が来たことに安心したのか、静かになったよ】

『そうなんですね……。カイユウ、容態ようだいはどうなんだ?』

【体の傷自体は全て治っています。しかし、レイヤー3での活動による反動については、俺たちが手を出すことができなくて……。あとは、ジュウザブロウさん本人次第って感じですね……】

『ありがとう。オトハちゃんも、みんなのことありがとうな』


 オトハちゃんは深々と頭を下げていた。ベースには、重い空気が漂っていた。

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