第162話 必殺の一撃。

 眉間への攻撃に成功すると、力が抜け、そのまま落下してしまった。落下中に、Demiseデミスの体に指を引っ掛けるようにして落下速度を抑えた。Demiseの太もものあたりになんとか着地することに成功した。そのままDemiseの様子を見るが、今までのDemiseのように崩れる様子がない。


『体の大きさのせいか……?』

【ヒカルさん! まだです! ”コア”が破壊しきれていません!】


 エンジが叫んだ。


『くそ! マジかよ!』


 シャルはDemiseの目玉と眉間に突き刺したままだ。自分の腕だけで、再びあそこまで辿り着かなければならない。不完全ながら、”コア”への攻撃によってDemiseの防御力や再生力が非常に落ちているようだ。指先に集功シュウコウを行えば、Demiseの体をよじ登れそうだ。


『うぉおおおおお!!』


 気合を入れ、登っていく。指先を使い、腰、脇腹、肩甲骨、うなじ、後頭部、そして頭頂部まで登りきった。眉間に浅く刺さったシャルを確認し、飛び降りた。


『これで……終わりだッッ!!』


 シャルに蹴りを入れ、更に奥まで突き刺した。Demiseは断末魔だんまつまのようなうなりを上げ、身をよじった。俺は落下しながらその様子を見ていた。緊張の糸が切れたのか、体が思うように動かない。


【ヒカル!】


 遠くから声が聞こえた。地面に落ちる前に誰かが受け止めてくれた。


【ヒカル! 大丈夫か!?】

『ジュウザブロウ……さん……?』

【すぐにオトハが来るからな!】

【すみません、お待たせしました!】


 本日2回目の治療を受けながら、俺は意識を失った。

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