第216話 夢の中へ。

―――A班


 オレが声を出す前に2人はよろめいていた。


【カイユウ、すまん! 行かせてもらう!】


 オレは治療を切り上げ、2人の元へと向かった。オレの目の前で、2人はトラオムの爪による斬撃によって血を流していた。


【ジン! リオン!】


 ジンは右腕を。リオンは胸の辺りを斬られていた。血まみれになった2人を確認しながら、オレは剣を振り回し、トラオムを遠のけた。


【カイユウ! 2人を頼む!】


 カイユウに治療を依頼し、オレはトラオムと向き合った。トラオムを追いかけると、街の中へと逃げていった。それはまるでオレを誘い込んでいるようだった。


【そのお誘い。ありがたく受けさせてもらうぜ】


 オレはトラオムの後を追いかけた。


 トラオムは待ち構えていた。脚の傷はまだ全快はしていないようだ。トラオムは腕を広げ、再びあの穴を開き始めた。警戒し、構えるが何も起きない。十数秒が経過した頃だろうか。まぶたが若干重くなった。


【グレンさん!】


 カイユウの声が聞こえた。


【そいつは睡眠を促進する成分を散布さんぷしています!】

【なんだって!?】


 2人がよろめいた理由、瞼が重くなった理由がすぐにわかった。俺の場合は、纏陣テンジンのおかげで症状は軽かったようだ。カイユウはオレの肩に手を置いた。


【……ッかッ!!】


 体に電撃が走った。


【眠気は覚めましたか?】

【あぁ、バッチリだ】


 振り返ると、カイユウの背後にトラオムの姿があった。カイユウの腕を引っ張り、地面へと伏せさせた。トラオムの腕が振り下ろされる。剣で受け止め、カイユウを逃がす。トラオムの爪を受け流し、胴体に斬撃を与える。トラオムはオレから離れ、全身に穴を開けた。


【マジかよ……!?】


 穴という穴から霧状の液体を散布し始めた。目の前は白く覆われ、トラオムの姿は見えなくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る