第80話 1つの戦い。

 8月146日……


 …


『……はっ!』


 気づいたら寝てしまっていたようだ。口元のよだれを拭きながら、起き上がる。


『本当に部活のときみたいだな』


 昔を思い出して笑った。点けっぱなしになっていたテレビを消して、シャワーを浴びる。


『さて、今日もレイヤー2に行くか』


 そう意気込んでいると、スマートフォンの通知音が鳴った。確認をすると、アスカからだった。


【ヒカルくん、おはよう。Demiseデミスについて、少し話をしておきたいんだけど、都合がいい時間を教えてもらえないかしら?】

『ちょうどレイヤー2に行こうと思っていたんだが、今からじゃダメかな?』

【了解。今からで大丈夫よ。ベースで待っていて】


 やり取りを終えると、俺はレイヤー2へと移動し、ベースへ向かった。


 レイヤースペースには、だいぶ慣れてきた。シャルの素振りをしつつ、アスカを待つ。10分もしないうちに、アスカが来た。


【待たせてごめんなさい】

『いや、別に大丈夫だよ。話ってなんなんだ?』

【今日は、Demiseと戦う際の知識や技術を教えておこうと思って。以前は基本的な部分しか教えてなかったけど、もうその辺りは問題なさそうだし、本格的に戦いを見据えて話をしておこうと思ったの】

『なるほど。確かに戦うために必要な情報が少ない気がするな……』


 思い返してみても、Demiseについては”倒すべき敵”といった認識しかない。


【最初にたくさん説明してもわからないだろうし、先に基本的な技術の体得や武器、レイヤースペースに慣れて欲しいって思いがあったの】

気遣きづかいありがとう。むしろそれでよかったよ。全部いっぺんに説明されてたら、何をしたらいいのかパニックになっていたと思うよ』


 笑いながら答えた。俺の反応にアスカは安心したようだ。


【よかった……。じゃあ、これからDemise講座を始めるわ。しっかりついてきてね】


 ”講座”という言葉に吐き気がしたが、ここも1つの戦いだ。気合を入れてのぞむことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る