第265話 会心の一撃。

 イツキさんは猛スピードで走っていく。大剣を手にした状態で、よくもまぁあれだけ走れるものだと思わず感心してしまう。イツキさんはスピードを緩めずにラヴに突っ込む。

 ……と、思いきや、ラヴの横を駆け抜けて行った。イツキさんの狙いが分かった。


【デゼスプワール、お前を倒しちまえば全部終わるんだろ!!】


 イツキさんは大剣を振り上げ、デゼスプワールに狙いを定めた。デゼスプワールの様子は変わらない。頬杖ほおづえをつき、余裕を見せている。


【ダァァラァァァッ!!】


 イツキさんの会心の一撃がデゼスプワールを襲った。


 時が止まったような感覚だ。

 一瞬にして静かになった。


 実際の時間にしたら数秒程度だったのだろうが、ずいぶんと時間が経った気がした。イツキさんの攻撃はデゼスプワールには届かなかった。デゼスプワールの前にはラヴが立ち、イツキさんの大剣を受け止めていた。


【瞬間移動でも使えるのかよ、貴様は……!?】


 ラヴはイツキさんの大剣を弾いた。そして、左腕をイツキさんの大剣と同じ形に変形させた。


『イツキさん!』

【イツキィ!】


 俺たちは思わず叫んだ。


わりぃ……。やっちまったわ……】


 イツキさんのつぶやきが聞こえた。その直後、ラヴは無慈悲むじひにもイツキさんの腹部を貫いた。

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