第279話 愛。

【今だ……っ!!】


 ラヴが光を放つ直前にジュウザブロウさんが叫んだ。光は一瞬にして周囲を飲み込んだ。俺はなんとか手で目を覆い、直撃は免れた。これで作戦の第三段階は完了した。あとは最後の作戦が完了していれば、俺たちの勝ちだ。

 俺は手を下ろし、ラヴを確認する。ラヴは頭部を破壊された状態で倒れていた。そして、ラヴの側には苦しそうに息をするミチヤがいた。


『お疲れ様、ミチヤ』

【大仕事、ありがとう】


 俺たちはミチヤにねぎらいの言葉をかけた。アスカとイツキさんは目を細くしながら唖然あぜんとしていた。


【そうか、2人は知らねぇんだったな】

【おいおい、どういうことだ?】

『過去の4体との戦いで攻撃を与えていなくて、武器を持てる人。それはエンジとカイユウだけじゃなかったんですよ』

【ミチヤはラヴにダメージを与えることができる条件を聞いたときにピンと来たらしいんだ。自分も該当するってね】

【ミチヤくんって武器を持ってたのね。創る専門だと思ってたわ】

【いや、僕は持ってなかったんですよ。だから創ったんです】


 ミチヤは息を整えながら、驚くことをサラッと言った。


【あの短時間でか!?】

【こう言ったら悪いのですが、ベースに残していた失敗作の寄せ集めって感じなんですけどね……。ほら、見てください】


 ミチヤが手にした、巨大なドリルのような槍はボロボロと崩れかけていた。


【この武器は持って1発って思ってましたが、予想通りでした】

『俺も創ってもらった剣がこんなふうになっちまったな。懐かしい……』

【……って、そんな呑気のんきに話してる場合じゃないか】

【そうね、戻りましょう!】


 砂状さじょうになったラヴをそのままに、俺たちは急いで戻った。

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