第226話 最後まで足掻け。

―――ジュウザブロウ


 目の前が真っ白になった意味を理解するには時間が無かった。まぶたは重く、目を開くことは難しかった。オレは迂闊うかつに動くこともできず、立ち尽くしていた。次の瞬間、オレの体に衝撃が走った。


【……っがっ……!】


 胴体にスペランツァの拳が叩き込まれたようだ。オレは吹っ飛び、次は背中に衝撃が走った。何かに叩きつけられ、動けなくなった。目はなんとか開けるようになり、スペランツァの姿がうっすらと確認できた。右腕を振り上げているのが見える。


【やばい……!】


 あんなのもう一回喰らったら、流石にキツい。


【足ィッ!!】


 叩きつけられた衝撃で痙攣けいれんを起こしている。つま先に力を込め、飛ぶように移動をした。スペランツァの一撃は、オレの居た場所を粉々に打ち砕いた。呼吸を整えようとするも、上手くいかない。心臓が激しく鼓動している。スペランツァの両肩がほのかに光っているのが見えた。目の前が真っ白になった原因はこれだ。両肩の突起は光を放つ器官なのだろう。ヤツの行動を見る限り、乱発はできないようだが、あの光り方はもうすぐ使える予兆のように思える。オレが思考している間に、再び右腕が振り上げられた。

 両腕で体を起こし、膝をつく。オレが立ち上がるよりも、スペランツァの攻撃の方が早いだろう。だが、足掻あがく。最後まで諦めない。オレはそういう男だ。


【オォォォォアァァァ!!】


 雄叫びを上げ、体に力を入れる。無情にもスペランツァの右腕は落ちてきた。しかし、それはオレには当たらず、数メートル離れた場所へと落ちた。


『ジュウザブロウさん!!』


 声のした方向を見ると、仲間がいた。


【みんな……!】


 涙がこぼれそうになったが、手で目元をぬぐった。スペランツァはよろめき、バランスを崩している。


【ジュウザブロウさん! 大丈夫ですか!?】


 ジンが駆け寄って来てくれた。そうか……。スペランツァの腕は斬り落とされたのか。


【あぁ、なんとかな……】


 ジンに支えられながら、オレは立ち上がった。

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