第147話 握り潰される。

 …


『……はぁ……はぁ……』


 俺は走っていた。何かに追われていたんだ。すぐ横で大きな音が鳴り響き、地面がえぐれた。


 誰かの叫ぶ声が聞こえた。


 だが、姿は見えなかった。気がつけば、俺1人だけのようだ。巨大な手が襲ってくる。何とか回避を続けるが、結局は捕まってしまった。強烈な握力により、胴体が締め付けられる。


『……うぐぁっ……ぁあ……』


 声も出なくなってきた。


 …


『……っぅ……っぷはっ……!!』


 8月165日……


 勢いよく上体を起こしながら目を覚ました。俺はベッドの上にいた。夢を見ていたんだ。周りの状況から察するに、タオルケットが顔にかかっていて息苦しくなっていたと思われる。息を整えながら、再び体をベッドへ預ける。


『はぁ……怖い夢なんて久しぶりだな……』


 スマートフォンで日付を確認する。戦いから1夜が明けていた。


『酷い夢だ……』


 朝からどっと疲れた。2度寝はできなさそうだ。体を起こし、なんとなくテレビを点けてみた。今週も晴れが続くようだ。

 ジュウザブロウさんからもらったあたり棒で交換したアイスを食べながら、部屋でくつろぐ。レイヤースペースに慣れたのか、疲労による体の痛みはほぼなかった。今日は家で1日ゆっくりと体を休めることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る