第288話 溢れ出るモノ。

―――頭の中


『おらァッ!』


 俺の雄叫びとデゼスプワールがシャルを弾く音が響く。


〈おっと、邪魔者が来たようだ〉

『なんだ……?』


 デゼスプワールが手をかざすと、天井が透明になった。


『……グレン! グレンもここまで来たのか!』

〈こいつは……いらないな……〉


 デゼスプワールが腕を奇妙に動かす。その前にグレンの剣がデゼスプワールを突き刺した。


『よしっ!』


 だが、何も起こらない。グレンも不思議そうな顔をしている。


『グレン! 後ろだ!』


 グレンの背後に無数の腕が迫っていた。何度も叫んだが、グレンには届かなかった。グレンも何かを叫んでいるようだが、俺には聞こえなかった。無数の腕の1本がグレンの腕を乱暴に掴み、空中へ投げ飛ばした。それを追いかけるように無数の腕が伸び、グレンの全身を拳が襲った。グレンは防御する隙もほとんどない状態で攻撃を受け、地上へと落ちていった。グレンの剣だけが静かに残った。


〈よし、これでいい〉

『テメェェェェェェッ!!』


 俺の攻撃はくうを切った。


『くっそぉぉぉ!!』

〈はっはっは。更に強くなったぞ。怒りか? 悲しみか?〉

『黙れェェェェェ!!』


 俺の中には”負の感情”が溢れていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る