第138話 氷菓。
声のした方を見ると、そこにはジュウザブロウさんがいた。
【よう。こっちで会うのは初めてだな】
『ジュウザブロウさん! お疲れ様です!』
【横、失礼するよ】
ジュウザブロウさんは手に持ったビニール袋から、アイスを取り出した。
『あっ、それ……』
【ははっ。お揃いだな】
俺と同じアイスを手にしていた。
【どうだ。気持ちは落ち着いたか?】
『えっ……』
【グレンが”ヒカルが恐怖で小便チビってた”って言ってたぞ】
『はぁ!? またアイツは……』
悪い顔をしているグレンの顔が脳裏を
『グレンの言うことは置いておいて、気持ちは落ち着きました。まぁ、1日かかってですけどね』
【そうか。よかったよかった】
『昔から”自分がやらなきゃ”って思っちゃうんですよね……。仲間を信頼していないわけじゃないんですけど、頼り方がわからないっていうか……』
話している間に、俺の持つアイスの棒からあと1口分残っていたアイスが落ちた。ジュウザブロウさんは、それをすかさず手で受け止めた。
【このアイスみたいに、もう地面に落ちて終わりだってなりそうでも受け止めてくれるやつがいたりするもんだ。頼り方なんて、とにかく”たすけて”の4文字を言えばいいだけなんだ。簡単だろ?】
『……ちょっと頑張ってみようと思います』
【おう、頑張れ。何があっても、オレは助けに行くからな。……この、手に乗ったアイスはもらっちゃうな】
ジュウザブロウさんは受け止めたアイスを口に投げ入れ、手をペロッと舐めた。
【グレンの言いふらしも、ヒカルへの助け舟だろう。あいつも素直じゃないからな】
『そうなんですかね……?』
【そうだよ、きっと。……おぉっと、オレはそろそろ行かなくちゃ】
『あっ、そうなんですね。今日は忙しい中ありがとうございました』
【いいよいいよ。これ、アイスのあたり棒。もう1本食べておけ。あそこのコンビニで買ったやつだから、そこで交換するんだぞ】
ポケットティッシュで棒を簡単に拭き取ると、俺に”あたり”と書かれた棒をくれた。
【アイスの食べ過ぎで腹を壊すなよ。それじゃあな】
ジュウザブロウさんはベンチに置いていたアイスのゴミを回収すると、
『はぁ……。全くもって
俺は天を仰いだ。しばらくして、俺は前を向き立ち上がった。改めて
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