第230話 カウントダウン。

 突然の事態に全員が動けずにいた。悠然ゆうぜんと俺たちの間を歩いていく。攻撃を仕掛けてくる様子ではない。砂状さじょうになったスペランツァの上に立つと、球状に砂をまとめた。


〈君たちは本当に凄いよ。正直、ここまでとは思わなかった〉

【褒めていただいてありがとう。ここでさらにやり合う気はなさそうだが、合っているか?】

〈あぁ、今はこれ以上戦うことはしない。こちらにも準備が必要だからね〉


 デゼスプワールは不気味に笑った。


【別にオレはここでやりあってもいいんだけどな】

【グレン。無理したらアカンで】

【ならば、またしばらくお別れかな?】

〈ふふっ、そうだな。8月200日……。10日後に再び会おう。そこで、全てが決まることになるだろう〉

【最終決戦、ってことですね……】

〈そう、最終決戦。是非、全力で来てくれたまえ。悔いのないようにお別れもしておきなさい〉

『親切にありがとよ』

〈いえいえ。それじゃ〉


 デゼスプワールは消えていった。静寂せいじゃくが戻ってきた。


【なんとか勝てたわね……】

【みなさん、すごいです!】

【オトハさん、ヒカルさんの手当を】

【あっ、そうでした!】


 カイユウとオトハちゃんが急いで駆けつけてくれた。幸い、大きな怪我は無く、数分の治療で問題ない状態まで回復できた。


『ありがとう、2人とも』


 感謝しながら立ち上がった。


『10日後……ですね……』

【……せやな】

【今までのことを考えると、デゼスプワールが言ったように、最後の戦いになるだろう。全員、必ず生きて戻ろう】

【当たり前だよ。ジュウザブロウさん。ここまで来たら、誰も失うことはしたくない】


 結果はまだわからないが、終わりへのカウントダウンが始まった。

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