第229話 拍手の音。

【ヒカルくん!】


 アスカの声が遠くで聞こえる。息ができない。


『……かっ!』


 体に力を入れるが歯が立たない。意識が遠のく。


【オラァッ!!】


 意識を失う直前に俺の体は圧迫感から開放され、地面に落下した。その直後にスペランツァの左腕も落下してきた。


【すまねぇ、少し寝ていた】


 見上げると、そこにはグレンがいた。


【ハルヒ! ”コア”はどこだ!?】

【コアは両肩ッス!】

【両肩だと……?】

【こいつには、2個のコアがあるんです! 両方共破壊してください!】


 ハルヒとエンジがグレンに答える。


【なるほどな……。イツキ、動けるか?】

【あぁ、行けるぞ】


 イツキさんはゆっくりと立ち上がった。意識がハッキリとしてきた。


『グレン、俺もやるぞ』

生憎あいにくだが、お前に出番はなさそうだ】

『え……?』

【こいつには、打撃に対しての耐性があるらしい。つまり、お前の攻撃は意味ないってことだ】

『そんな……っ!?』

【そこで大人しく見てろ】


 両腕を失ったスペランツァは立ち尽くしていた。両肩の閃光はもう一度出すことはできないようだ。2人の斬撃が肩部けんぶを貫いた。


 地響きがする。


 スペランツァの断末魔なのだろうか。十数秒が経ち、揺れは収まった。その後は他のDemiseデミスと同様に砂状さじょうに崩れていった。


『やった……のか……?』

【俺たちの勝ちだ……!】


 全員が一度深呼吸をし、喜びの声を上げた。


【みんな、よくやった。特殊な状況にもかかわらず、しっかりと勝利し、オレの救出もしてくれた。こんなにも頼れる仲間はそういないだろう】


 ジュウザブロウさんは俺たちを褒めたたえた。直後、拍手の音がし始めた。それは、俺たちが出している音ではなかった。音の発生源を探すと、それは体育館の外からだった。


 デゼスプワールが、そこに立っていた。

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