第88話 視線。

 纏陣テンジン集功シュウコウ放燐ホウリン……。


 意識して行ってみる。これを戦いながらって思うと、なかなか難しそうだ。アスカに教えてもらったことを復習し、練習を続ける。

 途中、誰かに見られているような気がした。だが、周囲を見渡しても、視線の主を見つけることはできなかった。グレンだったら、すぐに襲ってきそうだから違うだろう。かと言ってDemiseデミスでもないだろうし……。俺は気にするのをやめ、練習を続けた。しばらくすると視線は感じなくなった。

 時間が夕方近くになってきたので、帰路についた。


 部屋に戻り、カレンダーを確認する。


『今日が終わって、あと4日か……』


 次の戦いは、もう目の前だ。うかうかしていられない。シャワーを浴びて、心を落ち着かせる。風呂場から部屋へ戻ると、スマートフォンの通知ランプが光っていた。確認すると、アスカからだった。


【今日はお疲れ様。ちゃんと訓練するのはすごく偉いわ。だけど、休息を取ることも非常に大事なの。焦る気持ちもわかるけど、ちゃんと体を休めてね】


 まるで俺の心を見透かしたかのようなタイミングだ。昔から俺は頑張りすぎてしまう部分があった。いつも後悔するけど、つい忘れがちになってしまう。


『お疲れ様。気遣いありがとう。まるで俺の頭の中を覗いてるようで怖くなるよ(笑) ちゃんと休みも取らせてもらうよ』


 アスカに返信したあとに、レンに連絡してみた。明日はアイツらとご飯にでもいくか。ベッドに横になり、レンからのグルメ情報を聞きながら、明日の予定を立てた。予定が決まると、俺はすぐに眠った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る