第157話 脳裏を過る悪夢。

 巨大な手を前にして、俺は動けずにいた。段々と脳の機能は回復しているようだが、俺が動けるようになるよりDemiseデミスの攻撃の方が早いだろう。


 先日見た悪夢が脳裏のうりよぎった。


 巨大な手は俺の直前で横に弾かれた。俺を救ったのはアスカの射撃だった。


【ヒカルくん! 逃げて!】


 自分の今出せる力を振り絞り、Demiseから離れた。俺を追おうとするDemiseをアスカが足止めしてくれていた。少し離れた場所で座り込んでいると、オトハちゃんを抱えたジュウザブロウさんが飛んできた。


【ヒカル! 大丈夫か!?】

『まぁ、なんとか……』


 力なく笑って答えた。


【すまない……。オトハ、ヒカルを頼む】


 そう言い残すと、ジュウザブロウさんはDemiseへと向かって行った。


【すぐに完治させますからね……!】


 オトハちゃんの治療が始まった。本当に痛みが消え去るようだ。頭の中もスッキリとする。流石、医療班のエース。


『ありがとう、オトハちゃん。リオンさんはどうだった?』

【リオンさんは、治療が終わるとすぐに戦いへと戻ってしまいました……】

『そうか。無事ならよかった……』


 大半の傷が癒えると、俺は立ち上がり、Demiseの様子を見てみた。3人掛かりでなんとか食い止めているようだ。


『俺も戦いに戻るよ。オトハちゃん、気を付けるんだよ』

【はい。ヒカルさんも気を付けて】


 俺は戦場に向かって走り出した。

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