第128話 チェックメイト。

 アパートの屋上から周りを見渡す。わずかな葉の揺れ、地面を踏みしめる音、空気の振動。どれも見逃さないつもりで神経を研ぎ澄ます。


 ジャッ……。


 一瞬だが、砂利道の上を歩くような音が聞こえた。心当たりのある、近くの神社へと向かった。本殿ほんでんの屋根の上にアスカはいた。


『やっと見つけたぞ……!』

【あら、逃げ回って勝つのかと思ってたわ】


 アスカの挑発には乗らない。ここまで来たら、もう逃さない。確実に勝つ……!


『そんなところにいたら、神様に怒られるぜ』

【いいのよ。ワタシは女神様だから】

『まーだそんなこと言ってんのか……よッッ!!』


 飛び上がり、アスカとの距離を一気に縮める。アスカは空中にいる俺に狙いを定めている。


『……今だ! 伸びろ、シャル!』


 急速に伸びたシャルに、アスカは驚き、対応が一瞬遅れた。本殿の屋根に向かって伸びたシャルは屋根を貫き、大黒柱を破壊した。その影響で本殿は揺れ、崩れ始めた。屋根の上にいたアスカは体勢を崩している。

 伸びたシャルを縮め、地上に降りる。再びアスカとの距離を詰める。アスカは崩れたままの体勢で無理やり矢を放った。しかし、流石のアスカでも、そんな状態では狙いを定めることは難しかったのか、矢は俺の横を通り過ぎて行った。俺は倒れているアスカを見下みおろすように立ち、シャルを突き付けた。


『どうだ……ッ!』


 残り時間……あと5分。

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