第160話 戦場へ。

 俺がアスカを避難させている間に、Demiseデミスは少し離れた位置へ移動していた。


『おい! 待たせたな!』


 俺の声にDemiseが反応した。


 心臓が高鳴る。

 手足が震える。


 俺より強い人たちを傷つけたやつが目の前にいる。ただでさえ巨大な相手がさらに大きく見える。俺の気持ちをよそに、巨大な拳が俺を襲った。ギリギリで回避し、シャルで反撃する。しかし、”コア”以外への攻撃はほとんど効果がないようだった。


『なんなんだよォ!!』


 がむしゃらに攻撃するも突破口が見えない。我を忘れて攻撃をしているせいで、注意力散漫さんまんになっていた。左から来ていた攻撃に、直前まで気付いていなかった。避ける暇などなく、気が付いたら他人の家のリビングに倒れていた。


『ゴホッゴホッ……くそ……』


 避けられなかったが、瞬時に纏陣テンジンで防御を高めていたおかげで大事には至らなかった。立ち上がり、家から出ると、再びDemiseと対峙した。不思議と笑いがこみ上げてくる。


『ははっ……』


 頭上から拳が降ってくる。拳は地面へと突き刺さり、レイヤースペースを揺るがせた。


『……はははっ……』


 俺は無傷で笑っていた。拳の軌道きどうが曲がったのか、自分が避けたのかわからないままそこにいた。頭がえてきた。相手の行動が全て読めるような気がする。攻撃の軌道も見えてきた。体も動く。


 今なら、こいつを倒せる。

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