第276話 標的。

『うぉぉぉ!』


 向かってくるラヴに狙いを定める。そして、突きを放った。ラヴは体を回転させながらそれを避けた。


『……なっ!?』


 やられる。そう感じた。しかし、ラヴは俺の横を走り去っていった。まさか……。


『エンジッ!?』


 ラヴの狙いは俺じゃない。エンジだ。なぜわからなかったんだ。いや、後悔している場合ではない。ラヴを追いかけるも、追いつかない。


『くそっ……!』


 エンジの背後から人影が見えた。


【どぉぉぉらぁぁぁ!】


 イツキさんだ。イツキさんは大剣を振り下ろし、ラヴの歩みを止めた。そして、その隙にエンジが銃撃を叩き込んだ。ラヴは左腕と左脚に傷を負った。


【いつまでも寝てる場合じゃないんだよ!】


 イツキさんは左手の拳でラヴを殴った。エンジから受けたダメージもあり、ラヴはバランスを崩し、地面に倒れた。イツキさんは左手をぶらぶらさせている。


『イツキさん! 大丈夫ですか!?』

【あぁ、なんとかな】


 ラヴは倒れたままだ。


『様子が変ですね……』


 俺がそう言った瞬間、地面が揺れた。直後、体が浮き上がるような感覚が俺を襲った。


【おい、マジかよ……!?】


 ラヴは地面ごと俺たちをすくい上げ、投げ飛ばした。おそらくラヴは倒れた状態のまま、地面の下に腕を伸ばし、大きなスプーンのような形に変形させていたのだろう。そして、地面をえぐり、周辺をまるごと投げ飛ばしたんだ。

 俺とイツキさんは空中で逆さになっていた。見上げると、ラヴが歩いている姿が見えた。足を踏ん張ることができず、動けなかった。


『そうだ……! シャルを伸ばして……!』


 地面に向かってシャルを伸ばし、体勢を整える。


【僕は置いておいて、先に行け!】

『はい!』


 ようやく地面に降りたとき、俺の目の前にあったのは、エンジが吹っ飛ばされている姿と、エンジの武器である銃を踏みつけ破壊しているラヴの姿だった。

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