第207話 ストレート
「豹馬君のストレートは素直ですね。性格は捻くれてるのに」
関東大会の初戦が終わって。
学校に戻ってから、明日の先発での試合の調整の為にブルペンで軽く投げてる時の事。
見ていた輝夜さんに何故か罵倒された。
「え? 貶されてますよね?」
「あっ。ごめんね? 悪い意味じゃないのよ?
良い意味での話だよ?」
良い意味で性格が捻くれてるとはこれいかに。
良い意味ってつければなんでも良いと思ってるんだろうか。俺じゃなかったら普通に傷付くよ? キャプテンにそんな事言わないでね?
「まぁ、それは置いておいて。ストレートが素直とは?」
「回転数とかを見てたんだけど…。豹馬君は綺麗なバックスピンの効いたストレートを投げるのを意識してるよね? それも良いんだけど、偶には回転数の少ない、言い方は悪いけど汚いストレートなんかと投げ分けられると、もっとピッチングの幅も広がるんじゃないかなぁって。でもこれは諸刃の剣なんだよね…」
汚いストレートか。いわゆるクセ球というやつだろうか? 自分の意図しない変化とかされるのは好きじゃないんだよなぁ。
「うん。でもね、それを意図して動かせるならどうかな? メジャーで一時流行ったムービング系なんだけど。豹馬君くらいの変則フォームで投げるならまだまだ有効だと思うんだよね。フライボール革命全盛期の今はパワーで無理矢理持っていかれちゃう心配もあるし、高校野球は金属バットを使うからスイートスポットも大きいから、あんまり使えないって言う人もいるけど。使う人次第だと思うなぁ」
早口。すっごい早口。
オタクが趣味を語るみたいになってますぜ。
輝夜さんはムービング系が好きなんだろうか。
一応ツーシームは投げれるんだが。それにスラッターも俺の中ではカットの一種だと思ってるし、言うなればこれもムービング系では? もう充分なんじゃないかなぁと思う次第です。
「確かにそうだねぇ。汚いストレートに固執しすぎると綺麗なストレートの投げ方を忘れちゃう子も居るし…。なんかムービング系は昔からカッコいいって思ってたんだよね。時代のせいで淘汰されちゃってるけど…。今は大きく動く変化球が主流になりつつあるし…。でも投げる人によってはまだまだ通用すると思うんだ!」
球が速い人ならそれなりに通用しそうだけど。
160キロとか投げれる人なら少し動かすだけで、効果は絶大だろう。
俺はまだ体が出来てないから150前半しか投げれないが。いや、それでも高校生なら充分だけどさ。
「うーん。輝夜さんのお願いなら試したいところですけど…。ツーシームとスラッターがあるから、俺にはあんまり必要ないかなぁ」
「そっかぁ。そうだよね。これは私の理想の押し付けになっちゃうし。ごめんね。この事は忘れて。豹馬君が万が一綺麗なストレートを投げられなくなったら大変だし」
キャプテン辺りに話を持ち込んだら、喜んで試してみそうだけどな。
でもキャプテンってなんでも出来ますみたいな雰囲気出してるけど、意外に不器用だからなぁ。
チェンジアップをモノにするのにも結構時間がかかったし。途中怪我してたのも大きいけど。
でもチェンジアップ。チェンジアップか…。
「輝夜さん相談があるんすけど」
これも言うなればムービング系の一種なんじゃなかろうか。試して良い感じなら是非取り入れてみよう。死後の世界で一人で練習してた時は、完璧だと思ってたもんだけど、いざ現実で他者からの意見を聞いてみるとまだまだだなって思うね。
体が成長しきってないとはいえ、あれだけ練習したのにレオンや白馬君に打たれてる訳だしさ。
慢心せずに練習して、死後にやった事に拘らずアップデートしていかねばなるまい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます