第75話 ブルペンにて
「うーん。悪くないね」
焼き肉会が終わった次の日。
俺はブルペンで投球練習をしていた。
次の試合も先発は金子の予定だが、多分出番はあるだろう。
「脱力して投げると良い感じなんだよね」
「でも、脱力の塩梅が難しくない?」
「それはそう」
金子と感触を確かめながら投げているが、出力問題でビビって軽く投げてるんだけど、それがなんか良い感じ。
最後の最後で指先だけに一点集中して投げるとやたらと球が走る。
球速はそこまででもないけどキレがあるボールになる。
「結局三松学舎では新しいストレートも投げなかったよね?」
「まあなー。忘れてただけだけど。ホームラン打たれてテンパってたからな」
結果的に秘密兵器を温存できたから良かったけどさ。
手首にも負担が掛かるし。
「でもこれ、まあまあ球が抜ける。またホームランとか打たれたら嫌だし要練習かな」
「俺も試してみたけど難しい。カーブ投げるのに向いてないよね?」
「うん。脱力して投げるとカーブはダメだ」
多分抜く系のボールは向いてない。
チェンジアップもフォームがちょっとおかしくなったし。
ストレートとツーシームはよさげ。
「あー怪我の事を気にせず投げたい。一気に体がデカくなりすぎなんだよな」
「俺からしたら羨ましい限りだけど」
「勿論嬉しいんだけど…筋肉が全く追いついてないよね」
ママンから針金って言われるぐらいだし。
筋肉の付け過ぎは関節の可動域が狭くなるから、ゴリゴリのマッチョにはしない予定だけど。
それ考えたら大谷サンやべえよな。
ゴリゴリマッチョの二刀流って宇宙人としか思えない。
あんなの現実にいたらダメだろう。
俺は本気で転生を疑ってるね。
インナーマッスル鍛えたりしてるけど、集中的に出来るのはやっぱり冬なんだよなー。
バランスボードなんてもう匠の域に達してると自負してる。
肘の筋肉も頑張って鍛えてるけど、結果出るまでに時間がかかりすぎる。
俺が知る限り肘の筋肉だけを鍛えてトレーニングがないから慎重にやってるけど。
ここで焦ってやると絶対怪我するからな。
「そう考えると高校野球は業が深いよな」
「ねー。結果を欲しがって無茶な練習する人が後を絶たないのも分かる気がするよ」
「甲子園ってそこまでいいもんなんかな。目指してる俺達が言うのもなんなんだけど」
「行った事ないから分かんないよ。でも行きたいよね」
「うん。行きたい」
まあ野球バカなんだろうね。みんな。
その後の野球人生まで棒に振って行きたいとまでは流石に思わないけど。
プロ野球選手目指してると、どうしても後の事を考えちゃう。
スカウトに注目されてなければアピールの場として無理してでも行かないといけないかなと思うけど。
幸い、俺はこのまま怪我せず成長出来ればプロに行けると思ってるから、こんな考えをしてしまうんだろう。
もしくは、前世で怪我して野球を辞めたから必要以上に怪我に対して過敏になってるか。
高校野球に命をかけてる人達からすると俺の考え方は侮辱なのかもしれないな。
もっとも、考えを改める気はないが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夏の甲子園、面白くなってますねー。
負けちゃいましたけど、富山のアライバとか。
沖縄の東恩納君が良いピッチャーだなと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます