第282話 抽選会
「どうもお世話になります」
「ようこそおいで下さいました」
春の時と同じ旅館に到着。
練習場も既に春に甲子園を優勝した時から予約してあって、準備は万端だ。
「今日の予定はなんもなしやけど、出来るだけ宿から出やんようにな。マスコミとか、ファンがウロウロしとるで」
明日から開会式の練習やらなんやらでまた忙しくなるけど、今日だけは何もなし。
それなら大阪の街に遊びに行きたいところだけど、残念ながらそれは出来ない。甲子園がある場所は大阪じゃないが、それはさておき。
俺達が到着した時にはマスコミやらファンが待ち構えていたのだ。
このままのほほんと外に出て行ったら取材攻勢にやられること間違いなしだろう。
「お菓子パーティしようぜ。いっぱい買ってきたんだ」
なら旅館で時間を潰すしかあるまいと、何人かで集まってお菓子パーティを開催。
モンスターバウンドをしつつ、きのこたけのこのどっちが上かと論争をしつつ。
因みに俺はナマコ派だ。エリンギとかもあるみたいだぞ。
「暑苦しいな」
「声に出して言わないでよ」
今日は組み合わせ抽選会。
とあるホールに集まって、キャプテンは舞台上でくじを引く感じだな。
俺達は観客席でそれを見てる訳だけど、甲子園出場校のベンチ入りメンバー全員が集合する訳だ。そりゃ暑苦しいに決まってる。
「坊主頭が多いけど、そうじゃない高校も増えてるな」
「もうそういう時代なんだよ」
周りを見てみると、ちらほらと坊主頭じゃない高校もいる。流石に龍宮みたいに調子に乗って染めてるところはないけど。
「俺が野球を辞める頃には坊主が消滅してるかもしれないな」
「それはないよ」
ないか。そりゃ残念。
色々な面から判断しても坊主より、多少髪の毛がある方がいいと思うんだけどな。
長髪は汗がまとわりついて鬱陶しいけど。俺も染めてるけど、短く切ってるし。
『龍宮高校1番Aです』
「ぶふっ!」
隣のタイガとぺちゃくちゃ喋ってたら、いつの間にか龍宮が板を引く順番になってたらしい。キャプテンがちょっとやっちゃったみたいな顔をして引いた番号を見せている。
「1日目の第1試合って。変な運を持ってるな」
「開会式の後にすぐ試合だって。慌ただしいね」
別にどこでも良かったけど、1日目の1試合目はなんかなぁ。
まあ、俺が投げる予定じゃないから、気にする必要はあんまりないんだけど。
引いたキャプテンが責任を持って頑張って投げて下さい。
「選手宣誓もやらないといけないんじゃないの?」
「いや、あれは希望者でまた抽選するみたいだよ」
あ、そうなんだ。てっきり1番の人がやるもんかと。前までそうじゃなかったっけ?
『薔薇巻西高校1番Bです』
「あ、対戦相手決まったね」
「薔薇巻西かー」
一回戦の相手は岩手の薔薇巻西に決定した。プロ野球選手を何人も輩出してる強豪校だ。
一回戦の相手に不足はないね。
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