第12章 夏の甲子園
第281話 出発
甲子園が決まった後は慌ただしい日々を過ごした。
翌日は祝勝会をして部員達で盛り上がって、夏休み中だってのになんか学校にいっぱい龍宮生徒が来てくれて壮行会みたいなのをしたり。
「いつの間に」
「忙しいよね」
気付いたら新幹線に乗っていた。
忙しいったらありゃしない。甲子園が決まってから、まともに練習出来てませんよ。
まあ、俺は家に帰ってから父さんに付き合ってもらって練習したけどさ。
春と違って夏は忙しい。甲子園が決まってからの猶予がなさすぎるぜ。
「髪の毛もがっつり染めてやろうと思ったのに、時間がなかったな。ちょっとプリンになってきてるんだけど」
「それはそれで良い味が出てるんじゃない?」
今の俺は金髪なんだけど。
ちょっと根本が黒くなっちゃってる。
染めよう染めようと思って忘れてた。
「そういうお前はばっちり染め直してるじゃん」
「俺はマリンにやってもらった」
なんだ。惚気かよ。
ほんとお前達カップルはずっと仲良しだよね。熟年夫婦の雰囲気を醸し出しすぎてる。
「また高野連からお小言頂くんだろうな」
「もう今更でしょ」
まあそうだね。実際夏の予選が始まる前にも、髪の毛はどうにかならんのかと連絡があったみたいだし。校長先生と理事長はどうにもなりませんって言って終わらせたらしいけど。
「うーん。強豪校もいれば、初出場の高校もあるなぁ」
「桐生はいるな。クロコと会える」
俺達の一つ下で桐生に行った後輩の大鰐。
あだ名はクロコ。俺のパンとかウルみたいな感じでワニを英語にしただけ。安直ですみません。
「一年で桐生でレギュラーになるって凄いよね」
「6番打ってるんだっけ。立派になったもんだ」
桐生なんてレギュラー争いは熾烈だろうに。全国から4番とエースを集めてるみたいなもんだからね。そこから上級生を押し退けてレギュラー。素晴らしいと思います。
「虐められたりしてないかな?」
「大丈夫でしょ。パンと違って真面目な好青年だし」
「一言余計」
確かにあいつはシニアに入ってきた頃からかなり真面目だった。最初はどこにでもいる野球好きの少年って感じだったんだけどね。
メキメキと成長して、いつの間にかゴリラになっていた。龍宮に来てたら三代目ゴリラの称号はあいつのもんだったのに。
まあ、俺と甲子園で戦いたいって言いに、わざわざ俺の家に謝りにきたぐらいには真面目だ。軽い気持ちで龍宮に来ないかってスカウトしちゃって申し訳なくなっちゃったよ。
「桐生の問題はこいつだろ。ドワイト。なんでこんな馬鹿みたいなフルスイングで芯で捉えられるんだ?」
「三振を滅多にしないんだよね。それでいて当たれば飛ぶんだから、投げてる方はたまらないだろうね」
すんごいフルスイングなんだよ、マジで。
それなのにコンタクト率が凄いんだ。
羨ましいったらありゃしない。俺は全然当たらないのにさ。
「一回戦で桐生とかに当たらないかな。どうせならお互いに万全の状態で戦いたい」
「パンが投げるとは限らないでしょ」
確かに。
初戦に投げるのは多分キャプテンだし。
ドラフト前最後のアピールの場だからね。
俺達も全力でサポートする所存です。
そういえばキャプテンと輝夜さんって何か進展があったりするのかな?
ドラ一で指名されたら告白するっていうフラグを建ててたけど。
フラグが成立したらどっちが成就しないんだろうね。ドラ一か告白か。
どっちもってパターンもあるけど…。
ここはフラグクラッシャーに定評がある豹馬君がフラグの折り方を伝授してやらねばなるまいな。
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