第283話 薔薇巻西


 「なんだ、二刀流選手はいないのか」


 「あれはこの世のバグでしょ。あんな選手100年ぐらいは出てこないんじゃないの?」


 抽選会が終わり、旅館に戻ってきて早速薔薇巻西の映像を見てみる。


 かの有名な二刀流選手を輩出した高校だから、ちょっと期待してたんだけど、残念ながらそう都合良くいないらしい。


 タイガが言うようにあの人はちょっとおかしいよね。滅茶苦茶努力の人なんだろうなって思う。確かに才能もあったんだろうが、努力をしないと、あのメジャーの過密日程で投打両方をやるなんて出来ないでしょ。


 とりあえず俺は無理だね。まず打てないってのもあるけど、まともに調整出来る気がしない。HR王を取って二桁勝利して、ついでに盗塁もする。神様が才能の配分を間違ったバグとしか思えませんよ。もしかしたら、俺みたいに死後の世界で特訓してたのかもしれんな。


 って事は、俺も気の済むまで打撃の練習してたらワンチャン…。………ないな。俺が打てるとは思えん。ここまで当たらないのは何か打つ為の大事な才能が欠落してるとしか思えませんよ。


 まあ、かのレジェンド選手の事はさておきだ。


 「この3番が要注意か。高校通算90本の薬師君」


 「最近の高校通算はアテにならないけど、90本打ってるのは事実だからね。確かに要注意だ」


 この薔薇巻西って、定期的に凄い選手が出てくるよね。東北って人材の宝庫なのかな? それとも育成システムがよっぽど優れてたり? 先に挙げたレジェンド選手もそうだけど、それ以外にもメジャーリーガーはいるし、確かホームランの高校通算記録を持ってる人もここ出身だったはずだ。


 まあ、これは練習試合も込みであって、公式戦のみなら別の人なんだけど。確か番長さんだったはず。


 「練習試合も入れていいなら、レオンとか大浦は抜けそうだよな」


 「どうだろ? 練習試合は控えを出す事も多いから、そんなに出番がないし」


 どうせなら龍宮からそういう記録を出したいななんて思っちゃうけど、公式戦記録とか抜けないかな? 確か30本近かった筈だけど。

 勝負してくれるならワンチャンあるんじゃないかなとか思っちゃったり。


 「この薬師君も甲子園では打った事ないみたいなんだよね」


 「言い方は悪いけど、雑魚専の選手の可能性もあるって事?」


 この薬師君は今回が春と合わせて三回目の甲子園出場みたいだけど、まだホームランはない。地方の1.2回戦レベルからホームランを量産してるんだよね。レベルが上がっていくにつれて、ホームラン数は激減している。


 まあ、そりゃ当たり前の事だけど。うちには誰彼構わずホームランをぶっ放す奴がいるから感覚が麻痺しちゃう。


 「キャプテンがどうやって薬師君を相手にするか見ものだな」


 「俺もリードを考えておかないと。ちょっとキャプテンの所に行ってくるよ」


 「行ってらっしゃーい」


 まあ、薬師君の話しかしてないが、他の打者も普通に好打者である。キャプテンにはここで是非頑張ってもらいたい。


 なにはともあれ、高校通算90本のネームバリューは凄い。ここをしっかり抑えられるのであれば、ドラ一にグッと近付くはずだ。


 幸い相手投手は霊山と比べると何段か劣る。打線の援護も期待出来るし、のびのびと投げれたら良い結果になるんじゃないかなと思いますね、はい。

 

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